旅人が道中安全を祈願した「東海道三社」とは

知立公園

2023年11月30日観光旅行

江戸時代には庶民の社寺参詣が盛んになりましたが、五街道のうちでも太平洋寄りを進む東海道の路次に近い「東海道三社」は特に有名です。
「東海道三社」とは、三嶋大社・知立神社・砥鹿神社の3社とも、三嶋大社・知立神社・熱田神宮の3社ともいわれており、それぞれ古くからの歴史を伝える神社です。

三嶋大社:源頼朝も戦勝祈願した伊豆国一宮

三嶋大社

古くから伊豆国一宮として崇敬されてきたのが、静岡県三島市にある「三嶋大社」です。

「一宮」は令制国の中でもっとも社格が高いとされていた神社のことです。
その成り立ちには諸説ありますが、古代、中央から赴任してきた国司が国内の神社を巡拝して奉幣する風習があった中で、国府に近い順番から有力な神社が選ばれたのではないかともいわれています。

この「三嶋大社」は、平家打倒を掲げる源頼朝が、戦勝祈願をした神社としても知られていて、武士たちからも厚く崇敬されてきました。

神社には源頼朝の妻である北条政子が寄進したという「梅蒔絵手箱」が伝わっており、漆を塗った上に金粉を散りばめて梅花と雁を描き出した優品で、国宝に指定されています。
「梅蒔絵手箱」の本物は東京国立博物館にあり、境内の宝物館には複製品が展示されています。

「三嶋大社」は大山祇命・事代主命を祀る神社で、もともと農林水産業や福徳のご利益をもって知られる神ですが、江戸時代には関所が置かれた箱根の先に宿場町として「三島宿」があったため、道中安全の神としても庶民の信仰を集めました。

江戸時代後期に建立された本殿・幣殿・拝殿の建物は、国重要文化財に指定されているほか、樹齢1,200年でいまなお花を咲かせて甘い香りをただよわせる金木犀も、国天然記念物に指定されています。

三嶋大社
■所在地:静岡県三島市大宮町2-1-5
■電話番号:055-975-0172
■拝観料:境内自由、「宝物館」は大人500円、大学生・高校生400円、小中学生300円
■公式サイト:[こちらをクリック]
■交通アクセス:JR東海道本線・東海道新幹線「三島駅」から徒歩10分/東名高速道路「沼津インターチェンジ」から車で20分
■駐車場:1時間200円
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知立神社:珍しい多宝塔が残るかきつばたの名所

知立神社

西三河地方に当たる愛知県知立市も、同様に東海道の宿場町「池鯉鮒宿」があった場所です。
旧仮名遣いでは知立(ちりゅう)は「ちりふ」と書きますので、「池鯉鮒」の当て字は理にかなったものです。

知立神社」は三河国の二宮として栄えた神社で、この神社の御手洗に鯉や鮒が多かったから「池鯉鮒」と名付けられたといわれます。

景行天皇の時代、日本武尊の東国遠征の折に皇祖神を祀ったのが始まりといわれており、鵜草葺不合命など4柱を御祭神としています。

神仏習合の時代には神宮寺7坊があり、現在も境内には西三河地方では珍しい「多宝塔」が残っており、室町時代のものとして国重要文化財に指定されています。

毎年5月2日・3日には「知立まつり」が盛大に行われており、特に文楽(人形浄瑠璃)やからくり人形が上演される山車が奉納されることから、ユネスコの無形文化遺産にも登録されており、多くの観光客が訪れます。

在原業平がモデルとされる『伊勢物語』には、句頭にか・き・つ・ば・たの5文字を含めた「唐衣 着つつなれにし つましあれば はるばる来ぬる 旅をしぞ思ふ」の歌が載せられています。
この歌が詠まれたかきつばたの名所・八橋とは今の知立市に当たり、「知立神社」の隣接地の「知立公園」も毎年6月頃にはかきつばたが満開となり、にぎわいを見せます。

知立神社はまた、蛇避けの守札でも知られており、これを身につければマムシに噛まれずに済むという俗信があります。

知立神社
■所在地:愛知県知立市西町神田12
■電話番号:0566-81-0055
■公式サイト:[こちらをクリック]
■交通アクセス:名古屋鉄道名古屋本線三河線「知立駅」から徒歩10分/伊勢湾岸自動車道「豊田南インターチェンジ」から車で10分
■駐車場:無料
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砥鹿神社:本宮山に奥宮がある式内古社

砥鹿神社

愛知県豊川市の「砥鹿神社」(とがじんじゃ)は、三河国一宮に当たる神社で、平安時代に編纂された『延喜式神名帳』にも三河国の小社とあります。

本宮山の山頂には奥宮が鎮座しており、山中に古代の磐座遺跡などもあることから、本宮山を神体山とする山岳信仰があったことが知られます。

社記によれば、文武天皇の病気平癒のため、名高い仙人を迎えようと草鹿砥公宣(くさかどきんのぶ)という名の勅使が派遣されたものの、山中で道に迷ってしまったといいます。
そのとき本宮山で不思議な老翁に出会って道を教えてもらい、無事に役目を果たすことができました。
後日、公宣は再び本宮山を訪れて老翁に面会し、老翁の願いにより山麓に宮居を建てたのが「砥鹿神社」の里宮の始まりで、実はこの老翁は砥鹿大菩薩であったという話です。

なお、現在の「砥鹿神社」の御祭神は、奥宮・里宮ともに大己貴命(大国主命)とされており、ほかに里宮境内に事代主命と建御名方命を祀る「三河えびす社」があります。
また、利修仙人が開山したという奥三河の「鳳来寺」にも、「砥鹿神社」とそっくりの縁起が伝わっています。

砥鹿神社
■所在地:愛知県豊川市一宮町西垣内2
■電話番号:0533-93-2001
■公式サイト:[こちらをクリック]
■交通アクセス:JR飯田線「三河一宮駅」から徒歩10分/東名自動車道「豊川インターチェンジ」から車で5分
■駐車場:無料
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熱田神宮:三種の神器の一つ・草薙剣を祀る神社

熱田神宮

愛知県名古屋市熱田区の「熱田神宮」は、皇位のシンボルである三種の神器の一つ、「天叢雲剣(草薙剣)」を御神体とする神社として知られています。

景行天皇の時代、日本武尊が尾張国造の娘である宮簀媛と結婚して草薙剣を預け、日本武尊が亡くなった後、宮簀媛が草薙剣を祀る社を建てたのが、この「熱田神宮」の始まりです。

このような経緯から、古くから皇室の崇敬を受けており、織田信長も「桶狭間の戦い」の直前にこの神社に戦勝祈願したと伝えられ、境内には信長が寄進した築地塀「信長塀」が残っています。

また、境内摂社に尾張国造・乎止與命を祀る「上知我麻神社(かみちかまじんじゃ)」があり、その両脇の末社に恵比寿(事代主命)・大黒(大国主命)を祀っていることから、毎年正月5日には「初えびす」の祭礼があり、商売繁盛と家内安全を願う人々で大いににぎわいます。

熱田神宮
■所在地:愛知県名古屋市熱田区神宮1-1-1
■電話番号:052-671-4151
■拝観時間:24時間可、ただし「宝物館」は午前9時~午後4時30分(入館は午後4時まで)
■拝観料:境内自由、ただし「宝物館」は大人500円、小中生200円
■公式サイト:[こちらをクリック]
■交通アクセス:JR東海道本線「熱田駅」から徒歩3分/名古屋高速3号大高線「堀田インターチェンジ」から車で5分
■駐車場:無料
このページの編集者
Travelogues
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