室町将軍家本貫の地・歴史のまち足利を旅する

人力車

2023年11月25日観光旅行

栃木県足利市は、室町幕府を創設した源姓足利氏の本貫の地であり、織物などの産業で栄えた歴史をもっています。
今でも渡良瀬川に代表される豊かな自然と文化が調和する歴史のまち・足利を訪ねました。

足利学校:宣教師も記した坂東のアカデミア

足利学校

「足利学校」は、栃木県足利市にある「日本最古の総合大学」といわれる国指定史跡で、大きくは敷地の正面右半分に学校の区画が、左半分に孔子廟の区画があるのが特徴です。

その起源については、奈良時代に国ごとに置かれた国学の遺制説、平安時代に小野篁が創設したという説、鎌倉時代に鑁阿寺を開いた足利義兼が創建したという説、室町時代に関東管領・上杉憲実が創建したという説など、諸説入り乱れています。

確実なところとしては、室町時代の永享11年(1439)、関東管領・上杉憲実が鎌倉の円覚寺から禅僧の快元を招聘して庠主(しょうしゅ)、すなわち校長とし、あわせて書籍を寄進して学校を再興したことが知られます。

イエズス会の宣教師であるフランシスコ・ザビエルは、戦国時代の天文18年(1549)、インドのゴアに宛てた書簡の中で、「足利学校」のことを、日本最大かつ最も有名な「坂東のアカデミア」であると紹介しています。

江戸時代には幕府から朱印地100石を賜り、幾度かの火災に遭いながらもそのつど復興してきましたが、明治5年(1872)に廃校となりました。

しかし、その後も地元の熱意によりもとの建物が学校として利用されたり、貴重な蔵書を保存する図書館が開設されたりしており、現在では学校門、孔子廟のほか方丈などの主要な建物や庭園が復元され、江戸時代の最盛期の姿を見ることができます。

足利学校
■所在地:栃木県足利市昌平町2338
■電話番号:0284-41-2655
■営業時間:4月~9月は午前9時~午後4時30分、10月~3月は午前9時~午後4時
■入館料:一般420円、高校生220円、中学生以下無料、障害者は手帳提示で無料(付添1名も無料)
■公式サイト:[こちらをクリック]
■交通アクセス:JR両毛線「足利駅」より徒歩10分/北関東自動車道「足利インターチェンジ」より車で15分
■駐車場:国道293号向かいの「太平記館」駐車場が無料
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鑁阿寺(ばんなじ):中世武士の館跡に建つ国宝建築

鑁阿寺

鑁阿寺(ばんなじ)」は、「足利学校」の裏手にある真言宗の本山寺院です。

鎌倉時代の建久7年(1197)、足利家2代当主の足利義兼が、館の一角に持仏堂を建てて大日如来を祀ったのが始まりとされています。

1辺が200メートルの方形の境内は、周囲を堀と土塁に囲まれており、中世武士の城館の様子を今に伝えるものとして国史跡に指定されているほか、「日本100名城」にもランクインしています。

境内にはさまざまな建物がありますが、特に鎌倉時代の正安元年(1299)に建立された本堂は、室町時代に大規模に改修されているものの、和様に禅宗様を加味した関東地方の古い折衷様の建物としては貴重な事例で、平成25年(2013)に国宝に指定されました。

ほかにも歴史の教科書にしばしば掲載される「木造足利歴代将軍坐像」を安置する「一切経堂」、江戸時代に桂昌院(江戸幕府5代将軍・徳川綱吉の母)が再建した「多宝塔」などがあります。

鑁阿寺
■所在地:栃木県足利市家富町2220
■電話番号:0284-41-2627
■拝観料:境内自由、堂内特別拝観は有料
■公式サイト:[こちらをクリック]
■交通アクセス:JR両毛線「足利駅」より徒歩10分/北関東自動車道「足利インターチェンジ」より車で15分
■駐車場:境内北側(一方通行)に無料駐車場あり
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足利織姫神社:市街地を見渡せる縁結びの聖地

足利織姫神社

足利の市街地や渡良瀬川を一望できる機神山(はたがみやま)の中腹に鎮座するのが「足利織姫神社」です。

足利市は古くから「足利銘仙」に代表される織物の産地で、明治12年(1879)、市街地にある八雲神社の境内社だった織姫神社を独立させ、織物の守護神として機神山に祀ったのが始まりです。

この遷座の翌年に火災に遭い、しばらく仮宮の状態でしたが、昭和12年(1937)に不燃の鉄筋コンクリート造で社殿が新設されており、近代日本を代表する建築として国の登録有形文化財になっています。

女性の神様を祀るため縁結びの御利益を求めて参拝する人も多く、境内は「恋人の聖地」に認定され、二人で鐘を鳴らすと幸せになれるという「愛の鐘」が設置されました。

また、「足利を元気に」をキャッチフレーズに展開されている萌えおこしプロジェクト「あしかがひめたま」のかわいらしいキャラクター「おりひめ」は、この神社の神様という設定です。

市街地から境内へと続く参道には229段の階段がありますが、途中にある「蕎遊庵」は本格江戸前そばのお店で、行列ができる人気店となっています。

足利織姫神社
■所在地:栃木県足利市西宮町3889
■電話番号:0284-22-0313(奉賛会)
■拝観料:無料
■公式サイト:[こちらをクリック]
■交通アクセス:東武伊勢崎線「足利市駅」からあしバスアッシー5分、「通5丁目バス停」下車/北関東自動車道「足利インターチェンジ」から車で10分
■駐車場:無料
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法玄寺:蛭子伝説と相田みつをゆかりの寺

法玄寺

「足利織姫神社」の真下にある浄土宗のお寺が「法玄寺」です。

鎌倉時代の初め、足利義兼の正室であった北条時子の菩提を弔うため、足利義純が建立したと伝えられます。
その後寺院は荒廃したものの、慶長11年(1606)に江戸幕府の代官となった小林十郎左衛門により再興され、このとき真言宗から浄土宗に改められたとみられています。

北条時子は鎌倉幕府の執権・北条時政の娘に当たりますが、この時子に関しては地元に悲しい「蛭子(ひるこ)伝説」が残されています。
あるとき時子は生水を飲んで腹が膨れてしまいますが、滞在中の鎌倉から足利に戻った夫の義兼は、侍女の讒言を真に受けて、密通により時子が妊娠したものと疑ってしまいます。
そこで時子は身の潔白を証明するために自害し、遺言にしたがって遺体を改めてみると、腹には蛭が充満しており、密通により身ごもったわけではないことが明らかとなりました。
先非を悔いた義兼は時子に「智願院殿」の法名を付けて丁重に弔い、その子・義純が寺院を創建したという伝説です。

この伝説には長らく裏付けがなかったものの、戦前に境内で工事をしたところ、高さ1メートル以上もある鎌倉時代の立派な五輪塔が偶然にも発掘され、現在は「お蛭子さま」として境内の一角に祀られています。

また、境内墓地のひな壇の中腹には、独特の書体と素朴なことばが人々の心を打つ詩集『にんげんだもの』で知られる足利出身の書家・相田みつをの墓があり、今でもファンが多く訪れています。

法玄寺
■所在地:栃木県足利市巴町2545
■電話番号:0284-21-2790
■拝観料:無料
■公式サイト:[こちらをクリック]
■交通アクセス:東武伊勢崎線「足利市駅」からあしバスアッシー5分、「通5丁目バス停」下車/北関東自動車道「足利インターチェンジ」から車で10分
■駐車場:無料(県道挟んで反対側にある月極駐車場内1~10区画)
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樺崎八幡宮:浄土庭園をもつ足利家の廟所

樺崎八幡宮

市街地の北東に鎮座する「樺崎八幡宮」の歴史は、「鑁阿寺」の開基でもある足利義兼が、文治5年(1189)、奥州平泉での戦勝祈願のために伊豆走湯山から理真上人を招いて建てた「樺崎寺(法界寺)」に始まるといわれます。

足利義兼は晩年ここで念仏三昧の日々を過ごし、一説に生入定したともいわれており、以後は足利家の廟所として御堂や多宝塔などが整備されて栄えました。

足利将軍家の力が衰えると寺勢も衰退をたどり、明治時代の神仏分離令でついに廃寺となるものの、境内にあった八幡宮は氏子たちに守られて存続し、現在に至ります。

発掘調査により奥州平泉を彷彿とさせる鎌倉初期の浄土庭園があったことがわかっており、一帯は国史跡に指定され、計画的に建物跡の基壇部分の整備や園池の復元工事なとが行われています。

樺崎八幡宮
■所在地:栃木県足利市樺崎町1723
■拝観料:無料
■公式サイト:[こちらをクリック]
■交通アクセス:北関東自動車道「足利インターチェンジ」から車で5分
■駐車場:無料
このページの編集者
Travelogues
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