豪商のまち・松阪の名所旧跡を旅する
三重県松阪市は、江戸時代に「お伊勢参り」の旅人たちでにぎわう宿場町として、また江戸や大坂にも店舗を構える「松阪商人」と呼ばれる豪商たちの根拠地として栄えました。国学を大成した本居宣長の出身地としても有名です。
このように歴史の舞台で大きな活躍を見せた松阪市には、今も往時を伝える名所旧跡の数々が残されています。
松坂城跡:蒲生氏郷が築いた石垣の城
三重県松阪市のシンボルとなっているのが、国史跡に指定されている「松坂城跡」です。
この城は、天正年間に豊臣秀吉から伊勢12万石を賜った蒲生氏郷が、伊勢湾沿いの狭小な「松ヶ島城」に代えて、四五百森(よいほのもり)に新たに築いた城の跡です。
近江国の石工集団の穴太衆が中心的役割を担った壮大な石垣で知られ、石垣を構成する石材の中には、古墳の石棺の蓋を転用したものもあります。
かつては三層の天守がそびえていたといいますが、明治時代の廃城令に伴う建物の撤去などで、現在は石垣のみを残すばかりとなっています。
しかし、城跡は公園として整備され、春から初夏にかけては、桜や藤の花が咲き誇り、花見の名所として親しまれています。
また、城下にはかつての武家屋敷にあたる「御城番屋敷」が残るほか、城内に「歴史民俗資料館」や「本居宣長記念館」もあります。
松坂城の御城印を入手するには
近年は神社やお寺の御朱印集めがブームになっていますが、松坂城にも登城記念の御城印(御朱印)があります。
松坂城の御城印は、松阪駅前の「松阪駅観光情報センター」、城内の「歴史民俗資料館」、大手通沿いの「豪商のまち松阪 観光交流センター」で取り扱っており、頒価は200円です。意匠には蒲生家の家紋である向かい鶴があしらわれています。
御城印には小津和紙・因州和紙を使った500円のものもあり、「豪商のまち松阪 観光交流センター」で販売しています。
街歩きをするなら無料駐車場を活用する
「松阪市民病院」の向かいにある「松阪市駐車場」は、市民病院の来院者との共用ですが、イベント開催などの特殊な場合を除いて、観光客も無料で利用することができます。
また、土曜日や日曜日に限定ですが「松阪市役所駐車場」も同様に無料で開放されています。
市内の観光スポットは徒歩で移動ができる範囲に数多く存在していますので、こうした無料駐車場を拠点に街歩きをするのも効率的です。
■所在地:三重県松阪市殿町地内
■電話番号:0598-23-7771(松阪駅観光情報センター)
■公式サイト:[こちらをクリック]
■交通アクセス:JR・近鉄「松阪駅」から徒歩15分又は三重交通バス(市内パークタウン線)5分、「市役所前バス停」下車、徒歩3分/伊勢自動車道「松阪インターチェンジ」から車で10分
■駐車場:隣接の「松阪市駐車場」は無料
御城番屋敷:現存する最大規模の武家屋敷
かつての松坂城裏門の先にある、石畳の通路の両側に残る建物群が「御城番屋敷」です。
江戸幕末に松坂城を警護していた「松坂御城番」と呼ばれる紀州藩士20人とその家族が住んでいた武家屋敷であり、文久3年(1863)に建てられました。
国重要文化財に指定されていますが、現在でも子孫が生活をしており、その一部は内部まで一般公開されています。
■所在地:三重県松阪市殿町1385
■電話番号:0598-26-5174
■開館時間:10:00~16:00、ただし月曜日(祝日のときは翌日)、年末年始は定休
■入館料:無料
■公式サイト:[こちらをクリック]
■交通アクセス:JR・近鉄「松阪駅」から徒歩15分又は三重交通バス(市内パークタウン線)5分、「市役所前バス停」下車、徒歩3分/伊勢自動車道「松阪インターチェンジ」から車で10分
■駐車場:無料
本居宣長記念館:「鈴屋」や国学資料を展示
『古事記伝』を著し国学を大成したことで知られる本居宣長は、伊勢松坂の出身です。
国史跡である「松坂城跡」の中に、本居宣長が12歳から72歳で亡くなるまで暮らした「鈴屋」(すずのや)を移築・公開し、あわせて脇に展示室を設け、『古事記伝』の自筆稿本をはじめ、日記や自画像、「鈴屋」の名前の由来である古鈴などの遺品を展示しています。
公益財団法人鈴屋遺蹟保存会が運営しており、本居宣長に関連した資料の収集や調査・研究なども行い、館内には本居宣長関連の蔵書も数多く並んでいます。
■所在地:三重県松阪市殿町1536-7
■電話番号:0598-21-0312
■開館時間:午前9時から午後5時(最終入館時間は午後4時30分)
■休館日:月曜日(祝日のときは翌平日)、年末年始は定休
■入館料:記念館・旧宅共通、大人400円、大学生等300円、小人(小学4年生から高校生)200円
■公式サイト:[こちらをクリック]
■交通アクセス:JR・近鉄「松阪駅」から徒歩15分又は三重交通バス(市内パークタウン線)5分、「市役所前バス停」下車、徒歩5分/伊勢自動車道「松阪インターチェンジ」から車で10分
■駐車場:無料
本居宣長ノ宮:本居宣長を祀る神社
「松坂城跡」に隣接し、今なお残る四五百森(よいほのもり)の中に鎮座するのが「本居宣長ノ宮」です。
明治8年(1875年)に「本居宣長奥墓(おくつき)」まある旧山室村に創建されました。その後、大正4年(1915)にこの森に遷座しました。
国学の大成者である本居宣長を祭神として祀っていることから、学業成就のご利益を求めて全国から受験生が多く訪れ、合格祈願の御祈祷なども定番化しています。
この神社と隣接して、同じ四五百森には式内社の「松阪神社」も鎮座しています。
本居宣長ノ宮の御朱印をいただくには
本居宣長ノ宮では御朱印をいただくことができます。本殿の右手のほうに授与所があり、初穂料は300円です。
中央に本居宣長の有名な和歌「敷島の 大和心を 人問はば 朝日に匂ふ 山桜花」が書かれ、宮印や本居宣長が好きだった鈴(駅鈴)をかたどったスタンプが捺されます。
■所在地:三重県松阪市殿町1533-2
■電話番号:0598-21-6566
■公式サイト:[こちらをクリック]
■交通アクセス:JR・近鉄「松阪駅」から徒歩15分又は三重交通バス(市内パークタウン線)5分、「市役所前バス停」下車、徒歩5分/伊勢自動車道「松阪インターチェンジ」から車で10分
■駐車場:無料
松阪神社:四五百森にある式内社
「本居宣長ノ宮」に隣接する「松阪神社」は、創建年代は明らかではありませんが、平安時代に編纂された『延喜式神名帳』の「意悲神社(おいじんじゃ)」に当たるとされる神社です。
天正16年(1588年)、蒲生氏郷が四五百森(よいほのもり)に築城したとき、城の鎮守社に定めて新たに社殿を造営しました。城下町に「松坂」の名を付けたのも蒲生氏郷です。
また、新たに武家の守護神とされる八幡神を勧請したため、江戸時代には「八幡宮」と呼ばれていました。
明治時代には市内の17神社がこの神社に合祀され、社名も「松阪神社」に改まって現在に至ります。
境内には樹齢900年といわれる「長寿楠」があり、この場所に長い歴史があることを伝えており、その根本には本居宣長の歌碑が建てられています。
■所在地:三重県松阪市殿町1445
■電話番号:0598-21-3689
■公式サイト:[こちらをクリック]
■交通アクセス:JR・近鉄「松阪駅」から徒歩15分又は三重交通バス(市内パークタウン線)5分、「市役所前バス停」下車、徒歩5分/伊勢自動車道「松阪インターチェンジ」から車で10分
■駐車場:無料
旧小津清左衛門家:松坂屈指の豪商の館
松阪市の市街地にある「旧小津清左衛門家」は、三井家などと同様に江戸に店舗を構えて「江戸一番の紙問屋」といわれ、木綿商売にも手を広げて成功した豪商の館です。
軒先の犬矢来や格子戸、うだつの上がる外観は、「伊勢商人」の繁栄を今に伝える貴重な建物であり、三重県指定有形文化財にもなっています。
内部は一般公開されていますが、敷地内には内蔵などもあり、通りに面した間口以上に奥行があることがわかります。
■所在地:三重県松阪市本町2195
■電話番号:0598-21-4331
■開館時間:午前9時~午後5時(入館は16時30分まで)
■休館日:毎週水曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始
■入館料:一般200円、6歳以上18歳以下100円
■公式サイト:[こちらをクリック]
■交通アクセス:JR・近鉄「松阪駅」から三交バス(松阪中央病院行き)3分、「本町バス停」下車、徒歩2分/伊勢自動車道「松阪インターチェンジ」から車で10分
■駐車場:「松阪市駐車場」を利用(無料)
三井家発祥の地:越後屋・三井高利生誕の地
「伊勢商人」の代表格といえば、江戸に呉服屋を開き「現金掛け値なし」の新手法で成功を収めた「越後屋」の三井高利です。
この「三井家発祥地」は、元和8年(1622)に三井高利が産まれた場所に当たり、敷地内には高利が産湯に使ったという井戸や、高利の祖父である高安、父の高俊の墓碑、記念碑などがあります。
普段は扉で固く閉ざされているため内部を見ることができませんが、令和5年(2023)に「三井越後屋創業350年記念事業」の一環として、期間限定で一般公開されました。
■所在地:三重県松阪市本町地内
■公式サイト:[こちらをクリック]
■交通アクセス:JR・近鉄「松阪駅」から三交バス(松阪中央病院行き)3分、「本町バス停」下車、徒歩2分/伊勢自動車道「松阪インターチェンジ」から車で10分
■駐車場:「松阪市駐車場」を利用(無料)
本居宣長宅跡:移築前の本居宣長の住居跡
国史跡である「本居宣長宅跡」は、「松坂城跡」に移築された「鈴屋」が元あった場所に当たります。
「鈴屋」が移築されたのは明治42年(1909)のことですが、この場所にも本居宣長の長男にあたる春庭が住んでいた家や土蔵、旧宅の礎石などが残されています。
ここは元々が木綿問屋の「小津屋」の建物であり、本居宣長は23歳で京都に医業を学びに出た際に、商人としての「小津」から武士であった先祖の「本居」に復姓したものです。
■所在地:三重県松阪市本町地内
■公式サイト:[こちらをクリック]
■交通アクセス:JR・近鉄「松阪駅」から三交バス(松阪中央病院行き)3分、「本町バス停」下車、徒歩2分/伊勢自動車道「松阪インターチェンジ」から車で10分
■駐車場:「松阪市駐車場」を利用(無料)
御厨神社:『古事記伝』が奉納された神社
阪内川沿いに鎮座する「御厨神社(みくりやじんじゃ)」も、国学者・本居宣長にゆかりのある神社です。
元は伊勢神宮の荘園である「御厨」があった飯高郡平尾郷(今の松阪市内)に鎮座していたといいますが、蒲生氏郷が「松坂城」を築城した際、城の大手筋に遷座させました。さらに、元和6年(1620)には紀州藩士・長野九左衛門が城の鬼門の鎮守として現在地に遷座させています。
本居宣長の産土神に当たるのも「御厨神社」であったため、完成した『古事記伝』44巻をこの神社に奉納しています。
■所在地:三重県松阪市本町2304
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■交通アクセス:JR・近鉄「松阪駅」から徒歩10分/伊勢自動車道「松阪インターチェンジ」から車で10分
■駐車場:無料
岡寺観音:日本最初の厄除観音霊場
松坂駅近くにある「岡寺観音」は、正しくは「継松寺」といい、「日本最初の厄除観音霊場」として名高い寺院です。
天平15年(743)、聖武天皇の勅命により行基が創建したと伝わる寺院で、天皇の厄年に当たりこの寺院の如意輪観音を宮中に移して厄除け祈願の後、再びこの寺院に戻されたことが、「日本最初の厄除観音霊場」とされる由来になっています。
後に大洪水で堂宇が流出してしまいますが、海の中から本尊を拾い上げた漁師が出家して「継松法師」となり、この寺院を再興したことから、「継松寺」といわれるようになりました。
そして慶長17年(1612)、松坂城主・古田重治が元の場所から現在地へと寺院を移しています。
3月に行われる「初午大祭」は有名で、厄をはじきさるという意味の竹細工「猿はじき」や和菓子の「ねじりおこし」が土産物として人気です。
■所在地:三重県松阪市中町1952
■電話番号:0598-21-0965
■公式サイト:[こちらをクリック]
■交通アクセス:JR・近鉄「松阪駅」から徒歩5分/伊勢自動車道「松阪インターチェンジ」から車で10分
■駐車場:無料